未来会議

我々の役割

執筆者:石井 宏和 (釣船 長栄丸 船長)

 私は富岡町の小さな漁港で遊漁船を生業としていました。

 

私は、2011年3月11日の大地震による大津波で、娘、祖父、家を失いました。そして原発事故で故郷を追われ、高濃度汚染水の海洋投棄で、海までも奪われてしまった。

 

 あの時私は、船を守るために沖に船を出した。家族を守れなかった自分、妻に辛い思いをさせてしまった自分・・・。(妻も、娘、祖父と一緒に津波にのみ込まれ、奇跡的に助かりました。)あの時の行動が正しかったのか、今もわかりません。

 

 大震災では、多くの人たちが「自分は生かされた」と、言う言葉を聞きます。私もそう感じています。自分達は、なぜ生かされたのか?この大震災、原発事故の意味とは?何度も自分に問いかけました。

 

 私には幸い船が残され、妻、親、兄弟がいます。そして新たな命も授かりました。失った事を考えるより、自分達には何が残され、この起きた現実をどう受け止めどう生きていくのか考えなければいけません。今おかれている福島の現状を、良くするのも悪くするのも我々次第です。

 

 私は、福島の海の恵に生かされてきた人間です。今、福島の水産資源は回復しています。(震災以降、本格的な操業はしていません。)この福島の海を、未来に繋げられる海にするのが、海に生かされてきた人間の役割なのではないでしょうか。

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